アスペルガー症候群の人は就職が難しい?おすすめの仕事は?就活対策や就労支援サービスも紹介【前編】
2024.02.01
アスペルガー症候群はコミュニケーションや対人関係において困難が生じたり、考え方や作業内容に偏りが生じたりするのが特徴の発達障害です。
アスペルガー症候群の人は、障害の特性上、自分に合った仕事に就かないと上手くいかずに辞めてしまうことも多いです。
前編では、アスペルガー症候群の人におすすめの仕事や、直面し得る就活や就職後の苦労についてご説明します!是非ご覧ください。
アスペルガー症候群とは
「アスペルガー症候群」とは発達障害の一つです。
コミュニケーションや対人関係、こだわりや自我の強さ、感覚の過敏性などに特徴のある「自閉症スペクトラム」のうち、知能や言語機能に遅れが無いもののことを言います。
アスペルガー症候群の特徴
社会性・コミュニケーションの障害
アスペルガー症候群の特徴としてまず挙げられるのが、社会性やコミュニケーション能力の障害です。
知能や言語機能に遅れが無いことから、一見問題なくコミュニケーションが取れているように思えます。しかしアスペルガー症候群のある方は、話し相手の感情を汲み取ったり、空気を読んだ言動をしたりすることが苦手なため、自己中心的な印象や、話が通じにくいといった印象を持たれてしまうことが多いです。
アイコンタクトや身動きが不自然で、会話が一方的になりがちなので、人間関係のトラブルになりやすく、周囲から配慮が必要な場面もあります。
興味や関心の偏り
興味が限定的になるのもアスペルガー症候群の症状の一つです。自分の興味のある分野には高い集中力を持って取り組める一方で、興味のない分野には全く関心を示しません。
興味のあることには強いこだわりを持って取り組むため、細部にこだわりすぎてしまったり、上手くいかないとイライラしてしまったりすることがあります。
日常生活のパターン化
アスペルガー症候群の3つ目の特徴として、反復性の行動や自分の作ったルールへの固執による、日常生活のパターン化が挙げられます。
アスペルガー症候群の方は習慣や自分の作ったルールに強いこだわりがあるため、それが乱れることを嫌う傾向にあります。そのため、いつもとは違うパターンや非常事態が発生するとパニックになってしまうことがあります。
アスペルガー症候群の人が向いてる仕事・向いていない仕事
アスペルガー症候群の人に向いてる仕事
アスペルガー症候群の症状の特徴を活かせる仕事は、以下のような仕事になります。
・人とのコミュニケーションを取る機会が少ない仕事
・全ての業務または業務の大部分を一人で行う仕事
・他者の干渉を受けることが少なく、自分が主体的に進められる仕事
・作業内容がパターン化されており、それを繰り返し行う仕事
・高い記憶力や長時間の集中力を要する仕事
アスペルガー症候群のある方の退職理由として最も多いのが、職場での人間関係の問題であると言われています。基本的に自分が中心となって一人で進められる業務なら、他者とのコミュニケーションの機会も減ってトラブルを避けながら仕事が進められるでしょう。
また、特定の分野で高い集中力を発揮して作業に打ち込めるという特徴は、仕事によっては大きなメリットとなります。
これらの特徴を考慮すると、以下のような職業はアスペルガー症候群の人に向いていると言えるでしょう。
プログラマー
アスペルガー症候群の人におすすめする職業として、まずプログラマーが挙げられます。
「シリコンバレー症候群」という言葉をご存知ですか?シリコンバレーという言葉は、カリフォルニア州北部(アメリカ)に位置するサンフランシスコのベイエリア地域南部のことを指しています。ここには、世界トップクラスのIT企業が集まっており、たくさんのIT人材がいます。
実は、シリコンバレーで働くプログラマーのうち1割以上、グレーゾーン(アスペルガー症候群であると明確に診断されていない人)の人も含めると約半数に発達障害の傾向があると言われています。このことから、IT人材の持つアスペルガー症候群のことを、特別にシリコンバレー症候群と呼ぶことがあるのです。
IT企業のプログラマーには癖が強く、コミュニケーションが取りづらい人が多いとも言われています。その反面、優秀でなければシリコンバレーの企業に勤めることは不可能です。
基本的に一人で作業を進めることができ、業界に同じ発達障害を持つ人が多いという特徴からも、プログラマーはアスペルガー症候群の人に特におすすめの職業であると言えます。
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Webライター・Webデザイナー
WebライターやWebデザイナーもアスペルガー症候群の人におすすめの仕事です。
こうした職業も、基本的に一人でデスクワークで進めることになるので、人とのコミュニケーションの機会が少なくて済みます。高い集中力を要する仕事なので、自分の興味のある分野では高い集中力を発揮できるというアスペルガー症候群の特徴にもハマっています。
プログラマー同様、IT人材の需要が高まっている現代においては、これらの職業はとても人気です。
研究者・学者
歴史上の人物には、アスペルガー症候群であったと言われている人が多くいます。例えば、物理学者のアイザック・ニュートンや言語学者のルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインなどが挙げられます。
自分の興味のある分野には、高い集中力とこだわりを持って打ち込めるというのがアスペルガー症候群の人の特徴の一つですが、研究者や学者などはその特性を活かしやすい職業であると言えます。他人とのコミュニケーションを取る機会も少なく、自分のやり方で仕事を進められることから、人間関係のトラブルは避けることができるでしょう。
豊富な学識や、柔軟な思考能力を必要とする職業なので、急に研究者や学者になろうと思っても難しいでしょう。特にこの記事を読んでいる大学生の方で、自分の専攻している分野に興味があれば一つの選択肢として考えてみてはいかがでしょうか。
上記の3つの職業は、アスペルガー症候群の特性を逆にメリットとして活かし、活躍に繋げやすい職業です。
この他にも、会社の経理や財務管理のように数字と向き合う仕事や、運転手のように一人で目的を達成するタイプの仕事もおすすめです。
また、近年はインターネットを活用した仕事が増えており、1人でも在宅で稼げる時代になっています。自分の好きな分野で、好きなペースで仕事ができるYouTuberやライバーなどは近年人気の職業の一つです。
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しかし、アスペルガー症候群の特徴を仕事で活かすためには、その人の興味のある分野でなければなりません。自分の興味のある分野で、上記のような特徴がある仕事がないか調べてみると良いでしょう。
アスペルガー症候群の人に向いていない仕事
アスペルガー症候群の人には、以下のような仕事は向いていないと言えます。ですがこれらの職種で活躍されているアスペルガー症候群の方もいらっしゃるので、あくまでも例としてご参照ください。
・高いコミュニケーション能力を求められる仕事
・多くの人と接する機会がある仕事
・いくつもの業務を同時に行う仕事
この仕事特性を踏まえて、アスペルガー症候群の人には以下のような仕事はおすすめできません。
接客業
アスペルガー症候群の人はコミュニケーションを不得意とする傾向があるため、相手とのコミュニケーションが中心の接客業には向いていないと言えます。
職場によっては、客対応のマニュアルが用意されている場合が多いですが、ほとんどの場合、それに従っているだけでは上手く対応できません。接する相手が気難しい人であったり、クレームをつけきたりすることも多く、こうした状況でも常に丁寧な言動を心がける必要があります。
非常事態が発生した時にパニックに陥りやすい傾向があり、柔軟なコミュニケーションを不得意とするアスペルガー症候群の人には、接客業をするのは少々難しいかもしれません。
営業
柔軟なコミュニケーション能力を要する営業職も、アスペルガー症候群の人には向いていない仕事です。
営業職では、商材を気に入ってもらえるように、相手の機嫌をとったり、社交辞令やお世辞を言ったりする機会が多くあります。空気を読みながら、言葉を選んで会話をしなければならず、相手の言葉の裏にある本当の意図が汲み取れないと、コミュニケーションが破綻してしまう恐れがあります。
接客業とは違って応対用のマニュアルも無いことが多く、かなり難易度が高い仕事であると言えます。
飲食業
飲食業は、接客業の中でも特にアスペルガー症候群の人に向いていない仕事です。
お客さんとのコミュニケーションも大変ですが、複数の注文を同時に扱い、それをミス無くこなさなければなりません。忙しい時間帯には作業を素早く行わなければならず、パニックに陥ってしまう恐れがあります。
また、清潔感が重要な仕事でもあるので、身だしなみにも毎日気を使うことになります。
上記の3つの仕事以外にも、例えばスーパーのレジ係のように短時間で手際良く動く仕事や、複数の生徒を同時に見る教師などはアスペルガー症候群の人にはおすすめしません。
しかし、アスペルガー症候群の症状の現れ方は人によって違う上に、これらの職能は訓練次第では身につけることも可能です。
アスペルガー症候群の人は就活でどんなことに苦労する?
一般的な就職活動の流れ
民間企業への就職を希望する場合、就活を通して希望の会社に入社するケースがほとんどです。就活の進め方は人によって異なりますが、一般的な就活の手順は以下の通りです。
①自己分析
②仕事・業界研究
③応募書類作成
④エントリー
⑤選考(面接やテスト)
就活は膨大な量の情報を取捨選択しながら、自分の「軸」を持って進めなければいけません。近年は就活のハードルが上がり、たくさんのことを考えながら、同時並行で進める必要があります。このステップに沿って就活を進めた場合、アスペルガー症候群の人はどのようなポイントで苦労するのでしょうか。
自己分析
自己分析は、就活を始める上で最も重要なステップと言っても過言ではありません。自分を見つめ直すことで自分の長所や短所を探し、どういった職業が向いているのか、どんな業界へ進みたいのかといったことを明らかにします。ここで就活の「軸」を固めなくては、その先のステップで行き詰まってしまいます。
アスペルガー症候群の人の中でも、症状の現れ方は人それぞれです。つまり自己分析の段階で、自分の障害特性をよく把握し、どのような配慮が必要なのかを理解しておく必要があります。自分の特性を踏まえて、将来的にどんな自分になっていたいのかを見据え、それに近づくためにどうすれば良いのかを考えましょう。
仕事・業界分析
仕事・業界分析は、自己分析とほぼ同時並行で進めます。自己分析をして自分の特徴と向き合いながら、それを踏まえて自分にはどんな仕事・業界が合っているのかを調べていきます。
近年は、仕事・業界分析の一手段としてインターンシップや説明会に参加する人が多いです。インターンシップや説明会では、企業が用意したプログラムに参加することで、その業界ではどんな仕事をしているのか、その企業はどんなことを大切にしている会社なのか、ということを知ることができます。
インターンシップ・説明会が開催されるタイミングは企業によって異なります。たくさんの会社のインターン、説明会のスケジュールを把握して、それに合わせて行動するというだけでもかなり大変ですね。
さらに内容によっては、参加者でグループワークを行ったり、企業の方とお話ししたりする機会があります。アスペルガー症候群の人は、このような場面で他の参加者に比べて苦労することが多いです。
選考
応募書類の作成や、実際に希望企業にエントリーをする際にも難しいことはあるでしょう。ですが、アスペルガー症候群の人が特に苦労することになるのは、選考の段階です。
選考の形式は企業によって異なりますが、ほとんどの企業では書類審査に加え、面接があります。面接では、企業の面接担当者が様々な角度からあなたに質問をしてきますが、しばしば遠回しに志望動機を聞いてきたり、答えるのが難しい質問をされたりします。
選考段階で障害者枠を設けている企業もありますが、そうでない企業の面接は障害の有無に関わらず、全員が同じ基準で行われます。たくさん練習をして慣れていくのも一つの手ですが、最近取り入れられているWeb面接などでは、慣れない状況に戸惑って頭が真っ白になってしまうこともあり得ます。
アスペルガー症候群の方が一般的な就職活動をする場合について紹介しましたが、こちらの記事では発達障害のある人の就活について紹介していますので、ぜひご覧ください!
障害者が就職活動をするときのポイント3つ【精神障害・発達障害】
アスペルガー症候群の人が就職後に苦労する場面
アスペルガー症候群の特徴を踏まえて、アスペルガー症候群の人が仕事の中で苦労するであろうポイントについて解説します。
・職場でのコミュニケーション
・職場のルールや人間関係に従う
・報告・連絡・相談
・イレギュラーへの臨機応変な対応
職場でのコミュニケーション
アスペルガー症候群の人は、言葉の裏にある真意を汲み取って話すことが苦手な傾向にあります。ビジネスの世界ではお世辞や社交辞令を言う場面がたくさんあるので、そのような場面でのコミュニケーションには苦労するでしょう。
相手の冗談やお世辞をそのまま受け取ってしまうと、人間関係のトラブルの原因になることがあります。
職場でのルールや人間関係に従う
職場には、暗黙の了解や上下関係、そして独自のルールがあります。暗黙の了解や人間関係は文章にして伝えてもらえず、場の空気を読みながら、人との会話を通して自分で把握しなければなりません。
これを気にしないまま仕事をしていると、人間関係がこじれたり周囲から避けられたりするようになってしまい、職場に上手く馴染めなくなります。
また、アスペルガー症候群の人は自分のルールにこだわりを持っていることが多く、職場で決められているルールを無視してしまうことがあります。これは人間関係のトラブルにつながるだけでなく、仕事を辞めさせられてしまう原因にもなります。
報告・連絡・相談
報告・連絡・相談は、よく「報連相」と言ってまとめられ、社会人が仕事をする上で大切にしなければならない教訓になっています。これはビジネスの基本で、組織全体のためにも守らなければなりません。しかしこれは誰かに指示されて行うのではなく、自分が必要だと思ったタイミングで主体的に行わなければなりません。
また、仕事について相談して上司や先輩にアドバイスを貰っても、それが受け入れられずに自分のこだわりを優先してしまうというケースもあります。
イレギュラーへの臨機応変な対応
仕事に、イレギュラーや急な予定の変更は付き物です。アスペルガー症候群の人は、パターン化されていない行動や不測の事態への対処に困ることが多く、仕事でもこのような状況ではパニックに陥ってしまう可能性があります。
非常事態で冷静に対応できないと仕事が出来ない人だとみなされて、仕事が回って来なくなったり、場合によっては解雇の原因になったりするでしょう。
これらの特徴から、アスペルガー症候群の人は就職が難しいと思われがちですが、ポイントを押さえれば問題なく就職することができます。こちらの記事ではアスペルガー症候群の人の就活について解説しているので、合わせてお読みください!
アスペルガー症候群を含む、発達障害を持つ人の就職後の離職率は以下のようになっています。
勤続期間 | 継続 | 離職 | 計 |
〜6ヶ月未満 | 1.6% | 17.2% | 18.8% |
6ヶ月以上〜1年未満 | 10.9% | 20.3% | 31.2% |
1年以上〜2年未満 | 4.7% | 7.8% | 12.5% |
2年以上〜3年未満 | 1.6% | 4.7% | 6.3% |
3年以上〜5年未満 | 12.5% | 6.3% | 18.8% |
5年以上〜 | 3.1% | 7.8% | 10.9% |
未回答 | ー | 1.6% | 1.6% |
計 | 34.4% | 65.6% | 100% |
引用:厚生労働省
この表から分かるように、発達障害を持つ人が一般就職をした場合の1年以内の離職率は37.5%で、3人に1人が1年以内に離職していると言えます。
✔︎会社の業績が悪くなり、真っ先にリストラされた。
✔︎対人関係で落ち込み、ストレスがたまる一方で退職を決めた。
✔︎職務能力が不足していたこともあり、ちょっとしたことを危険行為をしたという理由で、退職させられた。
✔︎人事担当者は、本人の特性を知って採用したが、現場には伝わっていなかった。指示通りに動かない、人の話を聞かないなど欠点だけ伝わり、あっちこっちの現場をたらい回しにされた。親が呼び出しをうけ、自主退職をするよう勧められた。
引用:厚生労働省
対人関係によるストレスや、職務能力不足などで働きづらさを感じて退職する人が多いようです。
一般就職をした方が、障害者雇用に比べて高い賃金で働けるなどメリットは多いですが、自分にあった職場で長く働けるように、就活の段階で企業についてよくリサーチしておくことが重要です。
後編へ
前編では、アスペルガー症候群の人が直面し得る、就活や就職後の苦労についてご説明しました。
アスペルガー症候群の自分には就職なんて無理なのかもしれない…と悲観的になってしまった方々!安心してください。成功の道は必ずあります!
後編では、就活を成功させるためのポイントをご説明いたしますので、ご覧ください。